Q. 『タイタニック』が3D版で再公開されたころ、次は『ターミネーター2』に関心が向いていると話していましたね。あのころすでに『ターミネーター2』の3D化を考えていたのですか。
A. アイデアとしてはあったね。次に3D化すべき作品は『ターミネーター2』だと思っていた。四半世紀も前の映画だが、人々の記憶に残る、とても象徴的な作品だと思ったからだ。それにカメラの動き方、ショットの構成の仕方などを考えても、3Dにうまく変換できると思った。3Dに変換できない映画もあるからね。私は短いレンズで撮ることが多いが、3-400mmレンズで撮る人もいて、それだと3D変換には適さない。だが、『ターミネーター2』の映像なら適していると思った。それに、初公開から26年後に劇場のスクリーンで観るのも、おもしろいと思ったんだ。この映画をビデオやブルーレイやDVDでしか知らない人が大勢いる。だから、劇場ですべてを体験してほしいと思った。映画を作る者として、大きなスクリーンで観てもらうことが一番だからね。
Q. この映画をじっくりと観たのは久しぶりですか。
A. ああ、久しぶりに観たよ、4,5年ぶりだと思う。この映画は観るたびに驚かされる。いつ観ても古さを感じさせないんだ。1作目の『ターミネーター』は、いま観るとお粗末だ。低予算で作ったし、ハイスピード・フィルムの質が良くなくて、きめの粗さが目立つ。映画自体はいいし、満足している。でも、いま観ると古さを感じる。だが『ターミネーター2』は、まるで去年作られたかのように、古さを感じさせない。アーノルドもリンダ・ハミルトンも年をとり、変わってしまっているがね。1つの作品として見ると、まるでいま作られたかのように良くできている。最後の製鋼所の溶鉱炉のシーンは、CGを使えばもっと良いものができたと思うが。当時より良い機器がたくさんあるからね。レッカー車を水路に突っ込ませる方法もたくさんある。実際に突っ込ませることもできる。CGで高速道路の陸橋の下にヘリコプターを飛ばすこともできる。だが本物を使うほうが、ずっとおもしろい。
Q. 特殊メイクはどうですか。変更したい部分はありますか。
A. どれもかなり良いと思う。いまはもっと良くなっているのかい? もちろん、多少は良くなっているだろうが、はっきりと違いがわかるほど、大幅に良くなっているとは思わない。当時はラバーマスクもCGも使っていた時期だ。いまならすべてCGにすることが多いだろうが、当時はCGでできることは限られていた。だから、スタン(ウィルソン)は顔や体のキズや穴を作った。いまならすべてCGを使うだろうが、当時は実際に手で作ったんだ、頭が真っ二つに割れるのもね。CGショットは全体で42しかない。ほとんどゼロだね! 『アバター』では2800もあったから。
Q. 『ターミネーター2』のストーリーの一部は、1作目から展開したものだと、以前に話していましたね。
A. 『ターミネーター』の構想を最初に具体化したとき、金属の骨格の男が攻撃を受け、ストーリーの途中で粉々になる、というアイデアを持っていた。そのあと未来においてコンピューターに波動が起こり、人類はそれに気づいて、地下にあるブラックボックスに向かい、不気味に感じている装置を取り出す。その装置を最初にどこかに送ることができたのに、中身がわからず、人類はただ恐れる。そしてその装置を過去に送り込めば、あらゆる物を破壊していくとわかる。未来がどうなるのかわからなくなるんだ。そこで、その装置を開けてみる。そこから現れるのが液体金属の男、途轍もなく残忍な男だ。私はすでに1作目でこの男のことは着想していたし、続編でどこまで展開させるべきかもわかっていた。それに、ジョン・コナーが未来において重要なキャラクターになるという考えも、すでに浮かんでいた。そして、「よし、ジョンの10年後を描こう」と思った。ジョンが10歳になり、自分が神の子だと知ると、神はどう思うか。ジョンは混乱するだろうか。母は混乱するだろうか。そこまで考えていた。そこで、これらの要素、つまり液体金属の男と10歳になったジョンという要素を組み合わせてみたんだ。すると、ターミネーターはどうするかという問題が生じた。タイトルのキャラクターは誰にするのか。アーノルドに液体金属の男を演じさせるのか。だが、アーノルドには似合わないと思った。ではT-800をどうするか。アーノルドをどうするか。待てよ! 2つのサイボーグを現代に送り込んではどうだろう。一方を再プログラミングし、ジョンたちを守る善玉のサイボーグにしてはどうか。そういった考えが浮かぶと、おのずとストーリーが展開した。サラとジョンという特殊な核家族において、このサイボーグが父親の代わりになる。ストーリーはその方向に進んだんだ。
Q. 『ターミネーター2』の製作において、『ターミネーター』のときとどんな違いがありましたか。評価が上がっていると感じましたか。
A. ああ、感じた。『ターミネーター2』の製作時、私はすでに4本の映画を作っていた。『エイリアン2』と『アビス』は、物理的な映画という点で高い評価を得た。『ターミネーター2』では大がかりなカーチェイスのシーンがあった。高速道路のライトを何マイルもつけ、ヘリコプターを飛ばし、大きなクレーンや高度な小道具も使った。でも結局のところ、中心は、カメラの周りにいる人々なんだ。どれだけ多くの人がプロジェクトに関わっていようと、俳優、機材、スタッフが中心なんだ。そしておもしろいことに、それまでやってきたプロジェクトとあまり違いはないと感じた。予算が大きくなり、プレッシャーも大きくなったから、プロジェクト自体が大きく、不安も増してはいたがね。でも脚本が良く、キャストも素晴らしいとわかっていた。リンダは筋肉隆々に体を鍛え上げ、精神を集中した状態で現れた。エディはこの映画の命運がかかっているといえるほど、鍵となるキャストだったが、素晴らしい仕事をしてくれた。本作がデビュー作で、芝居の経験がなかったんだがね。ロバートも撮影初日から素晴らしかった。だから最初からみんな、特別なものを作っていると感じていた。